実は、ここで本文を全文公開しようと思っていたのですが、中には両親のプライバシーにかかわる記述などもあったりしますし、もしこれを公開したことがまわりまわって両親のもとに伝わったりしてしまうと、話がこじれまくると思いますので、概略のみの紹介でカンベンしてください…(^^;;)
正月の話は突然だったので、私(=父親)の意見をはっきり述べることができなかったが、これは大事な問題であるので、手紙で考えを述べることにした。
この手紙だけで問題が解決するとは思っていないが、今後手紙のやり取りや直接の面談を重ねて、根気よく対応していきたいと考えているので、君(=いずみ)も真剣に対応してほしい。
今の時点で、私が考えている問題点は、次の9つである。
- 現段階で既に、人前で裸になれないし、人前で入浴できないのではないか?
- 今後、今のような改造を続けていったら、上の度合は一層激しくなるのではないか?
- これらの状態は、君が今考えているよりもずっと不便が生ずるのではないか?
ふだんは問題ないとしても、親しい友人と温泉や海水浴に行くことはないのか?また、大震災などがあった場合、苦しい立場に追い込まれるのではないのか?
- そうなった場合、あとで後悔するのではないか?
- 肉体的な改造は、生理的に無理があるのではないか?内臓や筋肉その他に大きな障害は出ないのか?
これは医師によって見解は違うだろうが、本当に無理はないのか?
- 内臓等に障害が出ないとして、あとで後悔したときに、元の状態に無理なく復元できるのか?
- もし、復元できないのなら、一生、後悔の念をひきずっていくことになるのではないか?
よく「後悔先に立たず」と言われるが、本当に取り返しがつかないことなど、めったにない。しかし、この場合はその「めったにない」取り返しのつかないこと、にあてはまるのではないか?- この問題が公然となった場合、両親はともかく、弟やその家族はどう対応したらよいのか?
人間は自分のために生きているのであり、家族のために生きているのではない。まして、今回の件は、犯罪ではないのだから、家族に直接迷惑をかけるようなものではないことはわかる。しかし、「古い」と言われるかも知れないが、私の持つ社会通念上は「あまり人には言えないこと」である。ひっそりと暮らしている分には問題ないのかも知れないが、公然となった場合に影響が広がるのはよくあることで、そういう局面に対する配慮が全く必要ないとは言えないのではないか?
- (省略)
以上、否定的な意見ばかり述べたが、これは私見であり、何が何でも従わせよう、と考えているわけではない。君自身がいろいろと悩んだあげくのことだろうし、その悩みのために精神の安定を損なうということもあり得るし、自分の欲求と仕事といかに妥協させるか、その接点をどこに求めるのかが、課題となっているのだろうとは思う。
しかし、君は一度思い込むと後先考えずに突っ走るところがあるので、あとの後悔がなるべく少なくて済むようにとの老婆心から、このような手紙を送った次第である。
はじめに述べたとおり、時間をかけて、腰を据えて、じっくりと対応したいと思っているが、仕事が忙しいのを口実にずるずると引き伸ばし、後日「既成事実」として追認させようなどとは考えないでほしい。
私ももう古稀を迎えたので、残された寿命も長くない。できるだけ早く、返事がほしい。
父上へ
手紙ありがとうございました。
このような形で、問題を整理しつつやりとりすることで、よりよい解決方法がとれればよい、と思います。
なお、予め申し上げておきますが、この手紙の内容は、母上や弟君に見せていただいてもまったく差し支えありません。
さて、まず、様々な疑問にお答えするまえに、まず、私のsexualityなりgender identityなりについて、これまでの自己内面史も振り返りながら、聞いていただきたいと思います。
「人間」としての性を表すパラメータとして、最近の社会学では、(1)sex (2)gender (3)sexuality という3つを挙げています。
(1) sex 生物学的な性。いわゆるオスとメス。 (2) gender 社会的に決定づけられる性。男性性と女性性。 (3) sexuality 自分の性的指向がどちらの性を向いているか。
そして、これら3つのパラメータは、大抵の場合 MMF か FFM という形態をとります(M=male・F=female)。また、少数の人は、これ以外のパラメータをとりますが、その場合の各パラメータの値には、何の関連もないようです。
これら少数派のうち、すべてが同一の人はいわゆる「ホモセクシャル」です。
MMMなら「ゲイ」、FFFなら「レズビアン」と呼ばれています。
それに対し、(1)と(2)が異なる値を持つ人は、最近は「T's」とか「T*」と呼ばれています。これは、「trans...」の総称で、
(1) transvestite(TV) MFF か FMM。異性装愛好家(男性なら「女装」です) (2) transgender(TG) MFM か FMF。いわゆる「ニューハーフ」とか「ミスダンディ」と呼ばれる人々は、たいていこれのようです。 (3) transsexual(TS) TG のうち、自己の性器に何らかの不快感を持つ人。いわゆる「性同一性障害」
の3タイプに分類されています。また、(1)が male の場合は MTF (male to female)、(1)が female の場合は FTM (female to male)とつけて、オス・メスの区別をすることもあります。
先日、埼玉医大で「手術OK」の答申が出されたのは、このうちの(C)、FTMTS の方です。現在の医学上、TSは「脳の作用は男性/女性なのに、身体が女性/男性になってしまっている」という、「脳と性器が不一致の状態」とみなされる、ということのようです。
参考までに、性決定遺伝子・脳構造・性器は、お互いに強い関連はありますが、ただし例外はかなり発生します。そもそもほとんどの生物には、性決定遺伝子はありません。ヒトにはありますが、ただしこの遺伝子と実際の性別には、直接の関係は何もないことがわかっています。具体的には、妊娠後しばらくして、この遺伝子が男型の場合、男性ホルモンが全身に分泌されます。これにより男性型脳・男性器がつくられ、分泌がない、あるいは不十分だった場合、女性型脳・女性器がつくられるのです(intersexual=いわゆる「両性具有」は、このバランス異変が原因)。ただし、脳については、これは後天的な発達のさせ方によって、随分、使用している部分は変わるようで、結局、性遺伝子・脳・性器の間は、「密接」と言えるだけの関連性はない、ということのようです。
さて、では自分はどうなのか、と言えば、MFM の MTFTG、つまり
(a) 生物学的にオスだが、女性として生きたい。
(b) 男性を愛したいし、男性に愛されたい。
(c) 自分の性器に不快感があるわけではない。
ということになるのだと思います。ただし、志向性としては、
(d) 自分の身体特徴を女性化させたい
という願望もあります。でも、自分のgenderを「女性」として固定化したい、というわけではありませんし、男性役割を放棄しようとしているわけではありません。
自分が「まっとうでない」つまり、今の分類なら「MMFでない」というのに気づいたのは、中学生のときです。
それ以前も、例えば幼稚園の時に母上のウエディングドレスを遊びで着たときに、なんともいえないわくわくした気持ちになったり、黒や青よりも赤に異常な関心を示してしまったりと、兆候とも言える事態はあったのですが、「MMFやFFMであることがアタリマエ」の社会の中で、そのような気持ちは心の中にしまい込まれていたのでしょう。
中3のとき、別のクラスの同級生がゲイバーで働いている、という噂を聞きました。当時はまだ、ゲイとニューハーフの区別もわからなかったのですが、なんとなくおもしろそうだったので、本人からいろいろと話を聞いたのです。それによれば、彼は女装して、週に1〜2度、ホステスをしている、お客はとってない、ということでした。今から思えば、後者は本当だったかどうか怪しいですが(笑)、ともかく、自分の周囲に、ある意味で「一線を越えた」人がいた、ということに、妙な尊敬の念を覚えました。そして同時に、自分も女の子になってみたい、という感覚がむくむくっと持ち上がりました。
それ以来、家族が誰もいないとき、はたまた、学校の部室で、母上の化粧品や洋服を失敬して、メークしたり着てみたり、ということをはじめました。
ただ、このころは、マスターベーションの際に愛用していたのは女性の写真です。だから、表面上は、sexualityは女性に向かっていた、ということになるのかも知れません。ただし、その際に想起していたのは、「この女性とえっちしたい」ではまったくなく、「この女性と同じ服を着てみたいなぁ」というものでした。
実はこの傾向は、TGよりはTVによく見られるもののようです。TGにとっては、自分が抽象的な意味で「おんな」であることがごく自然なことなのですが、TVにとっては、自分が「おんな」であることは非日常です。そして、ある種のTVにとっては、「おんなである非日常の自分」が、何らかの形で愛の対象になる、という傾向もあるようです。
ただ、私の場合は、自分でお化粧していても、その姿を見て欲情するとかは絶対にありませんでした。理由は単純、「かわいくないから」です…(苦笑)
でも、それでも「おんなになってみたい」という願望は、まったく消えませんでした。妙に、安らぐんですよね…
(中略)
大学に入ってすぐ、学生運動をはじめる前、「まぁこれからはひとなみになるように努力しようかな」ということで、女の子とつきあってみようともしましたが、どうもすぐあきちゃったのです。どきどきするようなこともないし、なんだか退屈です。性交したい、とも思いませんでしたし…
そんな自分に、自信をくれたのが、やっぱり学生運動ではあったのですね。当時、××寮で運動をやっていた中にホモセクシャルな人が2人いたのですが、その2人は積極的に自らの指向性を表明し、また、当時まだ騒ぎが始まったばかりだったAIDSについても積極的に活動していました。私は××や×××××の方が忙しくて、そちらには何も関らなかったのですが、ただ「自分を出す」ということについては何ら臆するところもなくなり、寮内ではしばしば、女の子の恰好で過ごしていました。
寮に入ってから、収入的にはなんとかなるようになりましたので、それで洋服とかはぼちぼち自前で買うようになりました。ただ、寮を出て×××に就職した頃は、収入が急に増えたこともあり、食べ過ぎですぐ太ってしまい、持っていた洋服がほとんど着られなくなってしまいました…(笑)。
そして、その後はまたそちらの家でお世話になることになり、恵まれた環境の中、体重は減らず、何もしない日々が続きました。仕事や、アイドルマニア関係が充実していたこともありましたし、しばらくは平穏な日々が続きましたた。
しかし不運にも失業してしまい、どのみちやることもないとばかり減量にはげみ、それが成功してまた服が着られるようになりました。
そして、当時はじめていたパソコン通信を覗いてみると、なんと、そのような志向性の人がそれなりにいるではありませんか!
(中略)
現在では、真剣に恋してしまうのは、どうしても、身近にいる、MMF な人(いわゆる「ノンケの男性」)になのですが、でもそれを告白してしまうと、友情まで壊れかねません。だから、いつでも、永遠の片想い。でも、それが今、自分の存在を社会で守っていくために、最低限守らなければいけない線だということはわかっていますので、「しょうがないんだ」とあきらめています。
とはいいつつ、最近は、まわりの親しい人には、自分がどういう奴なのか、ということは正直に告白しています(もちろん、相手がどういう人かは慎重に見極めながらですが…)。ですから、最近の友人はほとんど全員が私の志向性を知っていますし、現在の会社の社長・社員も知っています(それでもかまわない、と言われている)。現在、一定以上のつきあいがある友人・知人・仕事の関係者のうち、私のそういう面を知らない人は、全体の2割もいません。
現在は、インターネット上で、TGやTSな人たちが集うコミュニティなどにも顔を出して、積極的に発言したりしています。
ホルモンについては、もちろん、高校生のときに話を耳にして以来、ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、やりたいやりたい、と思っていました。でも、お金もなく、また当時はコネクションがなければ入手できなかったので、あきらめていたのです。
しかし、3年くらい前から、投与してくださる医療期間がかなり増えてきましたし、情報も入手できるようになってきました。(中略)週1回3000円なので、大した負担ではないのですが、継続して効果が現れるものなので、やはりけじめをつけてから、と思ったわけです。
前置きが長くなりました。すみません。
では、父上の提示された、さまざまな疑問点に、自分なりに答えてみたいと思います。
(1)現時点で既に、人前では裸になれないし、人前では入浴できないのではないか?
私自身は、いかなる場合でも「平気です」が、もちろんここで父上が問題にしておられるのは「まわりがどう見るか」という点ですよね。
現在のところ、それほど極端には、乳房は発達していません。かなりぴちぴちのセーターとかを着ても、気づく人は、私がホルモンをやっていることを知っている人だけです(知っているから、ちょっとの差でも目につく、ということ)。
裸になった場合、現時点では、多少不自然かも知れませんが、それほど気にはならないレベルだと思います。
(2)今後、今のような改造を続けて行ったなら、(1)の度合は一層激しくなるのではないか?
そもそも、第二次性徴期をとっくに過ぎた時期に投与をはじめたので、それほど大きくはならないと思います(もちろん、本音を言えば、おっきくなってほしいのですが…)。
父上は後段で、「友人と温泉や海水浴で行く」という実例を挙げておられますが、友人はみんな私の事情を知っていますので、温泉に行く場合でも何ら問題は起こらないでしょう。海水浴へは、女性として行けばよいだけです。
一般論で考えた場合に「問題アリ」なのは、「1人で入浴しなければいけない」場合に絞られると思います。そして、東京での生活を考えた場合、このケースが不回避に発生するのは、やはり「災害の発生時」でしょう。確かにこのケースでは困ることが考えられますが、そもそも「生きるか死ぬか」の瀬戸際について、今ここで論じても始まらない、と、私は思います。
(3) (1)または(2)の状態というのは、君が今考えているより、ずっと不便なことが生ずる可能性が大きいのではないか?
風呂以外のケースで考えられるのは、医者にかかる場合と、健康診断です。
ただし、私はサラリーマンではないので、いずれも、理解のある医療期間で行えば、問題はありません。普通の診療ならば保険も利きます。
もちろん、私が思いつかないこともたくさんあると思いますので、今後もじっくりと考えていきます。
これに関連することなのですが、現在の日本社会では、戸籍上の男が、完全に女性として過ごしていくことは、やっぱり不可能です(そのようなアドバイスをくださった先輩もいらっしゃいます)。ですから、私も、よほど社会状況に変化がない限りは、男性役割を完全放棄するつもりはありません。つまり、仕事上では「男性として振る舞う」というつもりで働いていますし、これからもそのつもりです。
(4)そうなった時には、当然、後悔が起こるのではないか。
もちろん、未来のことは断言できません。
ただし、高校生のときに「第二次性徴期までにホルモンを打てば、身体の男性化を阻止できる」と聞いて、ひどく動揺した経験があります。あぁ、自分はもう手遅れなのかな、と…
つまり、自分の指向性は、そのころから、少しも変化していない、ということです。
(5)肉体的な改造は、生理的にはかなり無理がある筈だと思われるが、内蔵機能や筋肉機能その他に大きな障害はないのか。
外科的なものと、内科的なものを分けて考えます。
まず内科=女性ホルモン投与ですが、現代の医学では「1点を除いて、大きな障害はない、だろう、たぶん。」ということになっています。なぜならば、女性ホルモンはもともと男性にもごく微量ながら分泌されているものだからです。もちろん、特定の物質の濃度を高くすることで、何らかの恒常性維持にマイナス面があるかも知れませんが、それは他の薬(血圧の薬など)でも同じことです。
「1点」というのは、正月に説明したとおり、「生殖機能が失われる」ということです。
これについては、そもそも使うつもりがないので、個人的にはまったく気になりません。
ただし、射精できない、というのは、性的快楽が失われるということでもあります(笑)。でも、ホルモンの影響か、最近はめっきり性欲自体も減少しましたし、やさしく刺激して、射精はないけどちょっと気持ちいい、という境地を最近開発できたので、不満はありません。
次に外科的なものですが、これについては、
(あ) 乳房形成
(い) 睾丸摘出
(う) 陰茎除去
(え) 膣形成
(お) 声帯部分切除
などが考えられます。このうち、(あ)は国内で完全合法、(お)は違法の疑いがあり、(い)・(う)は違法性が極めて高く、(え)は完全に違法、ということになっています。
このうち、最も安全なのは、(あ)ではなく(い)のようです。手術そのものの安全性にはまったく問題がない上、デメリットもホルモン投与のそれを越えないようです。
(う)は、除去による後遺症はまったくないそうなのですが、尿道の処理が難しいらしく、手術そのものが失敗することがあるようです。
(え)に至っては、完全成功例が少ない上、成功しても、つくった膣は濡れることがないようです。また、手術後数ヶ月は療養しなければなりません。
(お)は、手術後、1ヶ月間声が出せない上、6ヶ月後になってみないと結果が出ない、というハイリスクなオペだそうです。
最後に、広く行われている(あ)ですが、意外とデメリットが大きいようです。後遺症が出る可能性も否定しきれないようです。アダルトビデオの女優さんたちの約3割はこの手術を受けていますが、やはり、不自然な形になってしまう例が大半です。ただし、世間の人は、それらを見ても「不自然」だとは思わないようなのですね。後でもとに戻すことができますので、(い)〜(え)に比べれば、その面では安心です。
さて、理想を言えば、私は(あ)〜(う)は「やりたい」のですね。
ただし、どのオペもけっこうなお金がかかります。今の私の生活レベルでは、とてもそれだけのお金は用意できませんし、できたとしても、仕事の方に投資しちゃます。
というわけで、少なくとも現在のような生活ぶりが続く限りは、外科手術をするつもりは「ありません」。
(6) 心理的に後悔が起こった時、元の状態に復元できるのか。その場合、医学的に無理はないのか。
現状では、外科手術をする可能性はありませんので、現在継続しているホルモン投与に限って考えます。
まず、生殖能力ですが、これは投与をやめても、もとに戻らないケースがほとんどだそうです。戻ったとしても、精子の数がかなり少なくなるようです。
次に、乳房ですが、これも、投与をやめても、もとに戻りません。ただし、「どうしても」という場合は、外科的に切除することは可能です(乳癌の手術などで乳房を除去するのと同じオペです)。手術代はかなりかかりますが。
ただし、これも未来のことなので断言はできませんが、「心理的に後悔が起こる」という事態自体が、想定できない、というのが正直な気持ちです。自分のgender identityは「おんな」にあるので、それが覆る、というのは、言ってみれば「いったん死んで、生まれかわる」のと同じですから…
(7) もし復元できないとしたら、後悔の念を一生引きずっていくのか?
乳房は(金に糸目をつけなければ)復元可能ですから、生殖能力にしぼって考えます。
これも、(6)で述べたとおり、非常に考えにくいことなのですが、敢えて一般論で言うならば、子どもが欲しくてもできない、そういう夫婦はいっぱいいらっしゃいます。それと同じことだと思うのですが…
(8) この問題が公然となった場合、両親はともかく、兄弟やその家族はどう対応したらよいのか?
実は、父上の挙げた疑問点の中で、私も「問題アリかな」と思うのは、唯一これです。
これだけは、私の責任で処理できないことですから。
まず、私個人の周囲の状況を説明します。
現時点で、私が MTFTG で、女性ホルモン投与を受けていることを知っているのは、
(1) 父上・母上
(2) 自分で運営しているパソコン通信(会員は知り合いばかり)の会員
(3) とあるアイドルマニアが運営してるパソコン通信
(会員は、そこの責任者の知り合い)の会員
(4) 職場の社長・同僚の大部分
(5) (略)
(6) Oさん・Iくん
(7) 大学のときにやっていた麻雀サークルのOB連中(毎年忘年会やっています)
(8) パソコン通信・インターネットで知り合った友人・知人たち
ホルモン投与は知らないが、私が MFM 型であることを知っているのは、
(9) ××寮でともに生活をしていたすべての人々
(10) 中学・高校時代の一部の友人たち
逆に、それらについてまったく知らず、かつ現在知人以上の関係にあるのは、
(11) 他の親類
(ただし、弟君は、高校の噂話として、何か気づいているかも知れません)
(12) 職場の同僚のうち2名
(13) (略)
(14) Nさん
という感じです。
「知らない」うちで、(11)は最大の問題だと思いますので後にくわしく触れるとして、現時点で「公然化」した場合に、個人的な問題が生じうるのは(13)です。しかし(中略)というわけで、それほど大きな問題ではないと思います。
次に、「公然化」が起こる可能性について考えてみます。
(a) (1)〜(10)に該当する人から、話が洩れた。
(b) パソコン通信・インターネット上から話題が洩れた。
(c) その他、何らかの媒体から洩れた。
(d) (11)〜(14)に該当する人に、外出中、偶然遭ってしまった。
この中で、(a)については、(1)〜(10)の人々の善意を信じるのであれば、まず可能性は薄いのではないかと思います。特に、(2)(3)については会則に明確に守秘義務がうたわれているので、私を裏切ることは、その他の会員全員を裏切ることになりますので…(細かい可能性を疑えば、キリがないですが)
次に(b)についてですが、これは今後、可能性は増えてきそうな気もします。ただ、これらについてはすべて偽名でやっていますので、私である、との特定は難しいと思います。
(c)ですが、現在のところ、MTFTG としては何らポジティブな活動(不特定多数の前で自己主張したり、本を書いたり、インタビューに出たり、etc)はしていないので、問題ないでしょう。(と思ったが、この前、××大の学園祭ののど自慢に出場して2位に入賞した、というのがありました(笑)。この1件だけです)
最後に(d)ですが、これは問題と言えば問題です。ただ、私をよく知っている、(2)や(3)の人が、そういう私を見て私だと気づかなかった、という例はざらにあります。予断や予備知識を持っている人ですらこのありさまなので、そうでない(11)〜(14)の人々には、まず、気づかれないとは思います。
とはいうものの、何らかのはずみで、「公然化」してしまう可能性は、絶対にゼロにはなりません。父上が心配していらっしゃるのは、その「偶然」が、親類、特に弟夫婦およびその関係者に与えるダメージなのですよね?ですから、この項の最後に、これについて自分なりの意見を考えてみたいと思います。
そのようなケースが生じた場合、攻撃してくるのは、いわゆる「世間の眼」と呼ばれるものですよね。「世間の眼」は、私がここまででくどくどと述べてきたような理屈には一切耳を貸さない、ということくらいはわかっています。「世間の眼」は、こうですよね。
変態
精神病
もしかすると、父上もそのようにお考えかも知れません。
私も一昔前だったら、そのような「世間の眼」と、闘うところです(笑)。
ただ、今回の件については、私は、そうするつもりは一切、ありません。
なぜなら、私にとっての目的は「世の中を変革する」ということでも何でもなく、ただ単に「自分の精神と肉体を、少しでも居心地よくしようと」しているだけだからです。
だから私は、そのような「世間の眼」との接点自体を、できるだけ小さくするようにはしたいと思っていますし、現にそうしているつもりです。
しかし、何らかの形で「公然化」してしまったとすれば、「世間の眼」とのかかわりが、容赦なく襲いかかってきます。
そして、そのようになってしまった場合、実は、私としては何の対処もできない、というところです。正直言って。
なぜなら、自分の gender identity なり sexuality なりは、もう、内面的には曲げようがない、と思われるからです。
大学生になりたてのころ、いろいろ変えようとしてみたけれど、何も変えられなかった。
インターネットでいろんな方々に尋ねてみても、みなさん、そういう経験をお持ちのようです。
世間一般の男性たちが、女性に恋し、女性に欲情し、女性と性交するのと同じように、私は、女性として男性に恋し、男性に身をゆだねるのです。それだけです。
だから、私にできることと言えば、
(A) できるだけ「公然化」が起こらないように、ハデな行動は謹む。
(B) そのような事態を想定して、あらかじめ弟君に事情を説明し、
弟君の関係者への対応は一任する。
これだけです。
無責任と言われるかも知れませんが、これでも、せいいっぱいなんです。
(9)(略)
(略)
最後に、これだけは申し上げておきたいのですが、自分の「息子」が、このような状態になったことについて、「育て方に失敗した」などというバカげた疑問だけは、持たないでください。
「原因」が、そうではない場合(つまり、生理的な問題でそうなった、など)などたくさんあり得ます。
そして、もし仮に原因が「育て方」だったとしても、では今生きている私は何なのですか?こんな人間は存在してはいけないのですか?
私は、立派に育てていただいたつもりです。
では、何か疑問に思うこと、反論のあるところなどありましたら、ご遠慮なく、手紙でも電話でもかまいませんのでお願いします。
もし必要であれば、sexualty や gender、また transgender・ホルモン治療についての資料なども送りますので。
(signature)