「いずみちゃんナイト2」配布資料
とらんすなてくにかるたーむひとこと解説集

 ※この解説集は、昨今の内外の情勢および参考文献から得た知識を、いずみなりに消化してまとめたものです。

☆「あのひとは××だ」編

トランスジェンダー(transgender・TG)

 自分の生物学的な性別、または社会的に決められた性別およびその性別「らしい」振る舞いを求められることに対し、何らかの違和感を感じている人びと。

トランスセクシャル(transsexual・TS)

 自分の持つ性器に対し、強い不快感・違和感(ex.「わたしはオンナなのに、なんでこんなでっぱりがついてるの?」等々)を持つひとびとに対し使われてきたが、最近では、単に「性転換した人・したい人」という意味で使われる。

トランスヴェスタイト(transvestite・TV)
 またはクロスドレッサー(cross dresser・CD)


 自分に「与えられた」性別とは別の性別に「変身」するために、異性装(いわゆる女装・男装)を行うひとびと。ただし、ドラァグクイーン/キング(その項参照)は含まないことが多い。

エムティーエフ(Male to Female・MtF)・エフティーエム(Female to Male・FtM)

 トランスジェンダーのうち、社会的に「男性」とされているが自分が「女性」であると自認する人をMtF、「女性」とされているが自分が「男性」であると自認する人をFtMと呼ぶ。TSやTG、TVと組み合わせてMTFTS・ FTMTS・ MTFTG・FTMTG・ MTFTV・ FTMTV といったように用いられる。

シーメール(shemale)

 外科的手術などにより発達した乳房を後天的に得、なおかつ男性のシンボルはそのまま持っているMtF。日本で言うニューハーフに近いか。

ニューハーフ(和製英語)

 元男性である女性ということを公言し、いわゆる「水商売」を職業としているひと。「オンナ以上にオンナらしいオトコ」というイメージが売りとなることが多い。実際には、トランスセクシャルもいれば、ゲイのひとが「オンナを演じている」場合もある。ただし前者の方がかなり多いようだ。

オカマ(近い意味の語として queer)

 古くからある言葉。江戸時代の男娼「陰間」(かげま)が変化してできたとも言われる。ニュアンスとしては、ゲイやトランスジェンダーやニューハーフをいっしょくたにして、なおかつマイナスイメージを含めた言い回しとして使われることが多い。英語の queer は意味として近いが、海外のゲイたちはこの言葉を自ら敢えて戦略的に用いている。

ゲイ(gay)・レズビアン(lesbian)・ホモセクシャル(homosexual)

 「男性が、男性として男性を好きになる」「女性が、女性として女性を好きになる」「同性が、同性として同性を好きになる」ことで、自分に「与えられた」生物学的・社会的な性別と、自分が何性であるかはほぼあるいは完全に一致している。

ドラァグクイーン/ドラァグキング(drag queen/drag king)

 ゲイ/レズビアンが、「男/女らしくない」という偏見に対抗するため、その「男/女らしくない」イメージを極端にカリカチャライズ(誇張による風刺化)したもの。トランスヴェスタイトとは区別されることが多い。

インターセクシャル(intersexual)

 いわゆる「両性具有」。外性器(見たかたち)と内性器(中身の組織・機能)が不一致だったり、♂と♀の中間型だったり、両方あったりする。現代日本では「病気」とされており「治療の対象」。戸籍の書き換えも可能だが、本人の意志に反して男女どちらかの性に「治療」されてしまうことの是非が、昨今問題視されはじめた。

パス(pass)

 トランスジェンダーが、日常的な生活や行動の中で、他人から「自分の望む性別である」と認識されること。MtFで言えば、他人から女性であると思われること。

リード(read)

 トランスジェンダーが、他人から「あの人は性別を変えている」と思われ、それによって意図せぬリアクションを招いてしまうこと。MtFで言えば、他人から「女装をしてる男性」だと思われてしまうこと。

☆ひとくちに「性」「性別」って言うけれど…編

セックス(sex)

 生物学的な性別。内性器・外性器・染色体などによって決定づけられる。インターセクシャルの例でもわかるとおり、この分類でも、人間を「男」と「女」の2つに区分することはできない。

ジェンダー(gender)

社会的に決定づけられる性別。意識の上での性別を指す意味でも使われる。いずれにしても、肉体の性別であるセックスと対比して用いられ、セックスでの区分以上に多様な要因が絡み合う。

ジェンダー・アイデンティティ(gender identity)

 自分自身の性別をどう自覚しているか。もちろん、「男性」や「女性」以外にも、「どちらでもない」「変化する」などの多様な形態がある。これが、生物学的・社会的に「与えられた」性別と食い違っているのがトランスジェンダーである。

セクシャル・オリエンテーション(sexual orientation)

 (広い意味での)性的な欲求の対象。「男性」「女性」「どちらも」「シーメール」「人間以外の動物」「非生物」など、これまた多様な形態がある。これが自分と同性に向かうのが、ホモセクシャル・ゲイ・レズビアン。

ジェンダー・ロール(gender role)

 社会が性別に対して与えてきた役割。例えば、「女は家事、男は仕事」といった偏見や、「女は化粧をし、スカートをはくが、男はそうしない」といった社会的常識が含まれる。ジェンダー・ロールをセックスやジェンダー・アイデンティティと切り離して考えることが、女性差別に反対する運動の出発点となってきた。

☆医療の現在

性同一性障害(gender identity disorder・GID)

 生物学的に「正常」な男/女で(intersexualではない)、自分の人格が女/男であると確信し、その確信が「精神障害」から来るものでも社会的な性役割からの逃避によるものでもない状態。日本精神神経学会の答申で、「正当な医療行為の対象」であることが確認された。

性再判定手術(sex reassignment surgery・SRS)

 俗に言う「性転換手術」。性別を転換する手術ではなく、こころとからだの不一致による不快感・違和感を取り除くための「最終手段」として行われる、という点では、精神医療の一環・一処置法であるとも言える。このため、最近はこれを敢えてgender reassignment surgery(GRS)とも呼ぶことがある。

母体保護法(旧優生保護法)

 第28条に「故なく生殖を不能とすることを目的とした手術をしてはならない」旨の条文がある。過去、これに基づき、とある開業医が有罪判決を受けて以来、日本でのSRSは「非合法」とされてきた。ただしこの有罪判決は、「故なく」の部分で医学界としての基準が確立されれば手術は合法、という指針をわざわざ示すもので、埼玉医大で始められた手術は、日本精神神経学会で承認された「故」としての「ガイドライン」に沿う形で行われている。
 とはいいつつ、2002年春の死亡事故で明らかになった^^;;、ガイドラインに沿わない^^;;大阪のW^^;;での手術については、それ自体の法適合性が問われているという情報は今のところ入ってきていない。「ヤミ」性転換手術だからただちに違法、というのは過去のものとなった感が強いが、もちろん、グレーゾーンには違いない。

ホルモン療法

 生物学的男性に対して卵胞ホルモンを、生物学的女性に対して男性ホルモンを投与する、GIDの治療法の1つ。卵胞ホルモンでは生殖能力の喪失・乳房の成長・体脂肪の増加などが見られるが、声質や体毛は変化しない。男性ホルモンでは生殖能力の喪失・筋肉の増加・声質の変化・体毛の増加などが見られるが、乳房は変化しない。


※参考資料
(1)「性同一性障害に関する特別委員会」答申 「性同一性障害に関する特別委員会」編
(2)「用語集」 東優子(お茶の水女子大学大学院)編
(3)「トランスジェンダーのためのホルモンセラピー・質問と回答 日本語訳」 (c) 1994 by Valerie Lambert(Valerie@shell.portal.com) 日本語訳 Take (75344.3323@compuserve.com)