栗林誠一郎『Good-bye to you』

栗林誠一郎『Good-bye to you』 BMCR-68 911216 released.

M01 Good-bye to you
 シングル・BMDR-72
M02 I Remember You

M03 Girls and Boys(Girl今でも)
←栗林「Girl今でも」(『LA JOLLA』)
→ZARD「Boy」(「この愛に泳ぎ疲れても」C/W)
M04 Hard to Say Good-bye
←生沢佑一(TWINZER)(サントラ『ホテルウーマン』)
M05 Secret Lover
←栗林「Secret Lover」(『LA JOLLA』)
M06 Being with You, All I Need

M07 Wait Forever(English version)
←亜蘭知子「Wait Forever」(『Stay in my eyes』)
M08 君がいない(piano style)
←栗林「君がいない」(『You Never Know』)
←TUNE's BLUES BAND「君がいない」
→ZARD「君がいない」
M09 One and Only
←亜蘭知子「One and Only」(『Stay in my eyes』)
M10 I Love You(English Version)
←亜蘭知子「やさしくしないで」(『Sunny Side Memories』)
M11 It's a Boy
←ZARD「It's a Boy」(『Goodbye My Loneliness』)


 栗林誠一郎−その名を知る人は、それほど多くないかも知れない。しかし、そんな人でも、彼の作った曲を聞いたことはあるはずだ。「もう少し あと少し…」「君がいない」「こんなにそばに居るのに」「サヨナラは今もこの胸に居ます」etc... そう、彼は、ZARDの数々のヒット曲を書いている、メロディメーカーである。そしてまた、ベーシストとしてあの「踊るポンポコリン」のB.B.クイーンズに参加、紅白歌合戦にも出演している。まさに、音楽制作集団ビーイングを支える1人である、と言っても過言ではない。
 しかし私は言いたい。彼の一番の魅力は、切ないヴォーカルにあるのだと。甘い声にあるのだと。…

 栗林はこれまでに、7枚のソロアルバムを発表している。実質上ソロと言っていいユニットBarbierのアルバム(ZARDに提供してきた曲のセルフカバー集。「もう少し あと少し」英語版が、泣かせます!)を合わせ、8枚のアルバムは、どれも魅力たっぷりだ。
 記念すべき1stアルバム『LA JOYYA』、WANDS「Secret Night」の原曲「It's my treat」(こっちの方がずーっとカッコイイ(^^))を含むheavyなつくりの『Summer Illusion』、現在の栗林サウンドの原点とも言うべき『You Never Know』、その1つの到達点となった『Goodbye to you』、より都会的に洗練された『会わなくてもI Love You』の5枚のアルバムをリリース。その後、ZYYG(ビールのCMソング「君が欲しくてたまらない」で有名)のメンバーとなり、その1stアルバムをプロデュース、自らのソロとは趣を異にする重いアメリカンロックを手掛け、引き出しを増やす(でもZYYG脱退後、他のメンバーからボロクソに言われてたようだが…(笑))。そして、キャッチーさを増した『遠く離れても』、砥ぎ澄まされた心地よさの『Rest of my life』、この2枚のアルバムで、栗林サウンドは1つの完成をみた。一昨年には日清パワステでソロライブも敢行。現在、ソロアルバムの制作中である。
 今回は、それらの中から、『Goodbye to you』をとりあげてみよう。



 栗林の4枚目のアルバム、『Goodbye to you』。冒頭に挙げた曲リストをご覧いただければわかるとおり、このアルバムのために書き下ろされた曲はM2・M6の2曲のみ、他はすべて、これまでに何らかの形で発表されている曲のリメーク・カバーである。実はこのアルバム、シングルとしてもリリースされているM1と同タイトルで、ドラマとのタイアップで掴んだユーザへの「栗林サウンドの紹介」とでも言うべき内容・構成になっているのだ。
 プロデューサは明石昌夫。本業はベーシストで、現在、A.M.G.というユニットでインディーレーベルからアルバムをリリースしているが、一般にはB'zのツアーサポートとして、またビーイングのNo.1アレンジャーとして有名である。このアルバムでも、巧みなアレンジメント・プログラミング、そしてとても味わいのあるベースプレイを聴かせてくれている。

・M-1 Good-bye to you
 作詞:高樹沙耶
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo,cho&b)・江口信夫(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・勝田一樹 from DIMENSION(ts)・大黒摩季(cho)・渡辺真美 from Mi-Ke(cho)・森友嵐士 from T-BOLAN(cho)・生沢佑一 from TWINZER(cho)

 「ホテルウーマン」挿入歌としてテレビでオンエアされていた、2ndシングルである。1stシングル「白いMy Love」は化粧品CMとのタイアップでそこそこ売れた、ということで満を持してのリリース、コーラス陣もご覧のとおりの豪華絢爛さである(大黒摩季はともかく、森友嵐士を使っているのがゴージャス(^^))。しかし、それほど売れなかったのは大誤算だった…(笑)。
 曲自体は前サビで、氏としては比較力強く唄っている。詞は女優の高樹沙耶が書いているが、彼女は同時期、ビーイングが本気で手掛けた伝説のアイドルデュオ、KEY WEST CLUBのシングル(「UNBELIEVABLE」。コーラスは大黒と栗林!!イントロの栗林アカペラは感動モノです!!)の詞も書いている。ビーイング総帥である長戸大幸氏のオファーでもあったのだろうか…(笑)。
 なおこの曲はSEGAの通信カラオケに入っている。ぜひ唄っておきたいところだ(笑)

・M-2 I Remember You
 作詞:川島だりあ
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo&cho)・明石昌夫(b)・川崎真澄(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・勝田一樹 from DIMENSION(ts)・小野塚晃 from DIMENSION(p)


 栗林のアルバムは、2曲めにはっとさせる曲を持ってくることが多い。この曲も、栗林定番の「失恋のせつなさ」を詞としながらも、そういった重さを感じさせず、かといって明るいわけでもない、絶妙のメロ&アレンジを聴かせてくれるのだ。明石のまったりベースがあまりにもすばらしすぎる!勝田のサックスとあいまって、泣けます…。
 ちなみに詞は、現在FEEL SO BADで大活躍中の川島だりあ。「バリバリ最強No.1」をがなぐり唄っているひとの詞とはとても思えません(笑)。

・M-3 Girls and Boys(Girl今でも)
 作詞:升添要一
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo,cho,g,&b)・渡嘉敷祐一(dr)・Jun Sumida(g)・勝田一樹 from DIMENSION(ss)


 1stアルバム『LA JOLLA』のラスト曲「Girl今でも」のリメイクバージョン。といっても、オケは全く同じで、歌詞が本人作からあの「国際政治学者」升添要一の英語詞になっているだけである。升添氏、このころは離婚した前妻への慰謝料の支払いのため、東大助教授を辞してタレント稼業を始めた直後であり、作詞にも手を染めたのであろう(他に聖鬼魔IIにも詞を提供している)。長戸大幸も、とんだスカウティングをしてくれたものである…(笑)。
 この曲、このしばらく後、突然陽の目を見た。ZARDのシングル「この愛に泳ぎ疲れても」のC/W曲、「Boy」だが、曲はまったく同じ、アレンジもほとんど同じ、でも詞はちょっと違って「作詞:坂井泉水」(笑)。カラオケでZARDの「Boy」をリクエストして、「Boy…」と歌詞テロップが出たところで「Girl…」と唄うのが、栗林マニアの正しいカラオケ法である(笑)。

・M-4 Hard to Say Good-bye
 作詞:小田佳奈子
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo&cho)・明石昌夫(b)・渡嘉敷祐一(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・小野塚晃 from DIMENSION(p)・和原進(tp)


 これも「ホテルウーマン」挿入歌だが、もともとはTWINZERの生沢佑一(このひと、大昔、アイドルやってたらしい。「銀座NOW」とかに出ていたそうな…これで話が通じるひとは立派なおじさん・おばさんでしょうか(^^;;))がカッコよく唄っている。栗林版では、切ない歌詞に切ない声質・歌唱がとっても泣かせます。

・M-5 Secret Lover
 作詞:小田佳奈子
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo&cho)・明石昌夫(b)・川崎真澄(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・小野塚晃 from DIMENSION(p)


 この曲は「Girls and Boys」と同じく、1stアルバム『LA JOLLA』からのリメイク。こちらは、原曲のsolidな感じとは全く逆に、このアルバム全体に統一した、洗練されたアレンジで、全く別の曲に聞こえる。DIMENSIONの若年寄(笑)、小野塚のピアノリフがとってもオシャレ(^^)。でもDIMENSIONのリーダー、増崎のギターは相変わらずのためまくりフレーズで、間奏でちょっとコケるか(笑)(…ってまたこんなこと書くから、DIMENSIONのライブで本人から突っ込まれちゃうんだよなぁ…(爆笑))

・M-6 Being with You, All I Need
 作詞:小田佳奈子
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo,cho&b)・江口信夫(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・小野塚晃 from DIMENSION(p)


 大きなスケールで「再会」を描いた詞(さすが小田佳奈子の職人芸(^^))を、力を入れて唄う栗林。対比的に間奏で流れる、途中の多重録音アカペラがとても気持ちよい。

・M-7 Wait Forever(English version)
 作詞:栗林誠一郎
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo&cho)・明石昌夫(b)・渡嘉敷祐一(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・勝田一樹 from DIMENSION(ss)・小野塚晃 from DIMENSION(p)


 ビーイング設立当時からの主要スタッフでありつづけた亜蘭知子のシングル曲(もちろんこちらの作詞は亜蘭知子)。そちらのアレンジは萩田光雄、いかにもCBSソニーな音が正統派リゾートサウンドしていたが、こちらの栗林−明石ラインでは、もともと栗林がつけていた英語詞(栗林は、作曲の時点で英語詞を自らつけてしまっているのだ。ダテに高校時代をロスで過ごしてはいない(^^))がごく自然に載り、勝田のソプラノサックス・小野塚の味のあるピアノプレイとあいまって、とてもおしゃれなサウンドだ。まだまだ若造だったせいか(笑)亜蘭版のアレンジをやらせてもらえなかった明石としてはまさに「してやったり」か(笑)。

・M-8 君がいない(piano style)
 作詞:栗林誠一郎
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎
 Musicians:栗林誠一郎(vo&p)


 ZARDの80万枚ヒット曲「君がいない」、実はビーイング内では4回めのリリースなのだ。はじめのバージョンは栗林の2ndアルバム『You Never Know』で、ちょっとハードっぽい仕上がり。次のバージョンは、ビーイングとB級モデル事務所(笑)ベストワンプロがタイアップして送り出したアイドルトリオ、TUNE's BLUES BANDのデビュー曲である。
 そしてこれが3作め。最後のサビのみを、ピアノ1本で聴かせてくれる。
 参考までに、これまでの3作はすべて同じ詞で、男の立場から書かれている。ZARD版は坂井泉水作詞で、女の立場から書かれている。これだけならよいのだが、…なんと、歌詞にかなりの重複がある(笑)。ビーイングの場合、WANDSの「Secret Night」(栗林「It's My Treat」のリメイク)などでもわかるとおり、通常は元曲の作家は明示するのだが、「すぐれた作詞家」((株)ヅァインレコーズ取締役・海老原氏の発言)である坂井泉水の詞がオリジナルではなく改作だ、というのはまずいのだろうか…(笑)。

・M-9 One and Only
 作詞:亜蘭知子
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo&cho)・明石昌夫(b)・小野塚晃 from DIMENSION(p)


 これはしびれます!あまりにくぅぅぅ〜〜〜〜っっ!!です!!!!
 愛している人には、こうやって愛を伝えたい。愛されたい人には、こうやって愛を伝えてほしい。
 誰しもがそう思うことまちがいなしの、亜蘭知子のすばらしい詞。明石のアレンジ&ベース。冴え渡る小野塚のピアノ。そこに響き渡る栗林の声…まさに愉悦のときである。

・M-10 I Love You(English version)
 作詞:栗林誠一郎
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo&cho)・青木智仁(b)・江口信夫(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)


 この曲も、亜蘭知子に提供したアルバム曲のセルフカバー。表の顔は日本を代表するベーシスト、しかしその実態は単なる大酒飲み(笑)の青木智仁がつくりだすうねり感に、これぞ増崎!という感じの重〜くひっぱるギターがベストマッチ。こういう曲なら、増崎大歓迎である(ってこんなこと書くからまたDIMENSIONライブで…(笑)

・M-11 It's a Boy
 作詞:坂井泉水
 作曲:栗林誠一郎
 編曲:栗林誠一郎&明石昌夫
 Musicians:栗林誠一郎(vo,cho&b)・江口信夫(dr)・増崎孝司 from DIMENSION(g)・山本千絵(cho)


 このアルバムの曲、後でZARDが2曲カバーしているが、逆にZARDに提供した曲をそのまま唄ったのがこの曲。ただし「そのまま」とは言っても、ZARDバージョンではAメロとサビで転調しているのに対し、こちらでは転調なし。アレンジが同じなのにメロが違う、という、両者を聴き比べれば比べるほど「???」な2曲である。私はもちろん、こちらのバージョンの方が好きなのだが、ただし栗林バージョンでは、最後のサビリフレインで、どうにも妙な女性コーラスが入る。うーん、これは何なんだろう?とコーラスを調べると、あらら、山本ディレクターが自ら唄ってたんですね(笑)。
 この曲で最大の謎は、こちらではなく、ZARDバージョンにある。こちらのギターは、誰がどう聴いても増崎早弾きなのだが、ZARDのもそれに酷似している。しかし…ZARDには、ギター担当のメンバーが別にいたはずでは????…(って、誰もそんなの信用してませんよね!?(爆笑))


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