あとがき(新規加筆)

 ここまでお読みいただいて、賢明な方はお気づきでしょう。
 「ここまで解析されている中学入試には、もはや新機軸に基づく出題は不可能ではないのか?」と。

 しかし、そんなことはありません。
 確かに現在、このような、可能なものについては、ほぼ解析されつくした感があります。
 ただ、小学生に理解できて、しかも類型的な解析が不可能な問題は、まだまだたくさんあります。

 その最たるものが「場合分け」が絡む問題です。

 さまざまな状況があり、その1つ1つを選択すると、動的に次の条件が変化する。その種の問題は、論理的な解説が可能な場合もありますが、ただそれを熱心にやっても意味はありません。なぜなら、入試では、同じ問題は2度と出題されないからです。
 もちろん、似た問題はしばしば出題されます。しかし、場合分け絡みの問題では、「似ている」のは状況の整理の仕方だけ、具体的な作業は各問ごとでそんなに似ているわけではありません。
 頼れるのは、多岐に渡る条件を短時間で整理できる、いわば、従来のメソッドで鍛えにくい能力のみです。



 ただし、実際問題としては、そのような問題を出題するのは最上位校に限られます。



 大学入試の数学のカナメの1つに、「例外処理をいかにスマートにこなせるか」とゆーのがあると、いずみは考えています。
 針の穴ほどのロジックの漏れ、これを自ら見つけだし、自ら塞いでいく能力…これは、学校教育では最も鍛えにくいものの1つです。だから、そーゆー素質を持っていそうな生徒、つまり「ある程度、小さいうちから『複雑な条件を整理できるだけの脳の体力』を持ち合わせているコ」を集めてしまう。

 私立中学・高校だって、単なる1私企業です。儲からなければやっていけません。そのためには、理念に沿うことができる生徒をいかに集めるか。私企業である以上、当然、考えることですよね。

 そして、いわゆる最上位校にとって、東大早慶をはじめとする難関大学に「何人合格させたか」。これが最大のセールストークなのですから、「青田買い」をするのも当然なのです。

 また、それ以外の学校のうち、大学進学に熱心なところは、現状よりも少しでも合格者数を増やして、顧客にアピールしなければなりません。そして、生徒のお尻を叩いて最も手っ取り早い効果が期待できるのは、早慶上智をはじめとする難関私大文系。なにせ、数学や理科が入試科目にありませんから、鍛えやすいのは事実です(^^;;)。そして、それらの学校は、特に「数学的能力に秀でた」コを集める必要はないわけですから、入試問題で「思考力や脳の胆力を診るような難問」を出題する必要もまた、ないわけです。



 そんなわけで、多くの中学受験生にとって、パターンの習得自体は、まだまだ意味を持ち続けます。
 これからも、多くの塾で、パターン習得のためのトレーニングが、小学生たちに課されつづけるのでしょう…

(97.06.11記)



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