算数と数学の違い(2)−予想と論証

 では続いて、[問2]を検討してみます。

[問2]9でわると5あまり、4でわると2あまる3けたの数は全部で何個あるか。

 この問題が、理系大学の入試問題レベルであることは先に申し上げたとおりです。しかし、なぜか、小学生にとっては難しくない問題なのです。
 なぜでしょうか?

 実はこれも、「数学と算数の違い」によって起こった現象です。
 数学は、論理性・ち密さを大切にします。いいかげんな推理を前提に解を求めることは、原則として許されません(もちろん、そうやって求めた解が、正しい解であることを後づけで示せば許されるのですが)。ですから、たとえば数列の問題なら、その数列の性質を厳密に考え、一般論で話をすすめなければなりません(どの数にもあてはまる性質を示すためには、 n番めの数を nを含む式で表して証明しなくてはならない、等々…)。
 しかし算数は違います。数列ならば、数(かず)の並びにどのような規則性があるのかを推理し、その推理に従った予想ができるのか、その推理を活用できるのか、といった部分が評価されるのです。その推理が正しいかどうかの厳密な論証などは一切不要です。

 この問2では、まさにそのような「推理」ができるかどうかのみが問われています。では、解答を見てみましょう。

[解]実際にそのような数の候補を並べてみる。

 4でわると2あまる:
   2, 6, 10, 14, 18, 22, 26, 30, 34, 38, 42, 46, 50, …

 9でわると5あまる:
   5, 14, 23, 32, 41, 50, 59, …

 この中では、14と50が問題の条件にあてはまる。4と9の最小公倍数は36だから、条件にあてはまる数は、はじめが14、以降は36ずつ増えていく数のならびと考えられる。つまり、条件にあてはまる数は、36でわると14あまる数である。

1〜999のうち
999÷36=27...27
→28個
1〜99のうち
999÷36=92...27
→93個

 すなわち、個数は 28−3=25個 である。


 この解のポイントは、「まずとにかく、書き出してみる」という、いかにも算数らしい、原始的方法から開始することにあります。実際、小学生にこのレベルまでの整数の性質を完全に理解させることはほとんど不可能です(それができているのかどうかが、理系の大学入試で試されるくらいなのです!)から、単純に処理できるようなごく特殊なケースを除けば、「とにかく試してみる」のが唯一絶対の方法になります。
 そして次に、「この問題が約数の問題なのか、倍数の問題なのか」を見極める作業です。整数のわり算がテーマなるのですから、95%、約数か倍数で処理する問題です。この場合、条件にあてはまる数が(3けたという制限を除けば)無限に存在するのはあきらかなので、どう考えても倍数の問題です。とすれば、4と9の最小公倍数が何らかのカギになっていることも容易に想像できます。そして実際に、求めた2つの数の差はその最小公倍数になっているのです。後は容易でしょう。
 もしこれを、数学の問題として解こうとするならば、

4a−9b=3 を満たす整数(a, b)の組(ただし 0≦a<9, 0≦b<4)がただ1組存在する

という、「知る人ぞ知る」定理を使わなければなりません。これはまさに「理系大学入試レベル」なのです。



 実はこのテーマは、小学算数の範囲内でもある程度厳密に理解することは可能です(少なくともいずみは、小学生のときに算数のワク内で理解してた(^^;;))。ただ、マス授業の中では、なかなか伝授するのは難しくもあります。
 だから、規則性の推定で、逃げるわけです。そして、その推定が外れることはめったにありません:-p




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