新潟日報 03年1月13日「住基ネット、戸籍… 性別記載 見直しじわり」

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住基ネット、戸籍…性別記載 見直しじわり

東京支社・野沢達雄

小金井市 印鑑証明書から削除
性同一性障害者らに配慮

 住民基本台帳ネットワークシステムなど行政が取り扱う個人情報に関して、不必要な性別情報削除を求める動きが出てきた。背景に、自分の性別に違和感を持つ当事者からの異議申し立てがある。東京都小金井市は昨年の十二月議会で、印鑑登録証明書から性別表記を削除する方針を明らかにした。戸籍の性別書き換えを可能にするよう求める意見書採択も出ている。専門家は「性別情報に限らず、記載する個人情報は必要最小限にとどめるべきだ」と、個人情報の慎重な取り扱いを指摘している。

 小金井市市議会は昨年九月、「ストーカー対策及び本人による訂正請求権等に関し戸籍法の早期改正を求める意見書」を全会一致で採択した。この中に、「性同一性障害者の性別記載については性別の書き換えのできる道を開くこと」という項目が盛り込まれた。
 提案者の若竹りょう子市議は「心と体の違和感を抱える人に、行政ができることは何かを考えた」と話す。 同市に続き、昨年十二月十八日には武蔵野市議会でも同趣旨の意見書が採択された。
 小金井市は十二月議会で印鑑登録証明書から性別記載欄をなくすことを表明。同市は「印鑑証明書の目的に照らして、性別情報が必須ではないため、早急に削除するために準備を始めた」(市民課)と説明する。
 印鑑登録証明書については旧自治省通知で氏名、生年月日、住所とともに男女の別を記載することになっているため、大半の自治体がこれに従っているとみられるが、実際の書式は自治体の条例で決めることができる。
 若竹市議は「各種証明書や申請書には、法改正が必要なものもあるが、自治体レベルで変えられるものもある」と性別表記削除を求めていく考えだ。

自己決定権を侵害

 昨年十一月末、東京・新宿歌舞伎町でシンポジウム「強制される性別 トランスジェンダーと戸籍、住基ネット」が開かれた。
 主催者でパネリストも努めたIT技術者の米沢泉美さん(37)=東京在住は男性として生まれたが現在は女性として生活している。米沢さんによると、自分の性別に対する違和感は当事者によって非常に多様だ、という。
 生物学的な性別と、自分が「女である」「男である」という性自認が逆の人。「両性具有」(インターセクシャル)の人や、これらの違和感を複合的に抱える人もいる。
 住基ネットでは、今年八月から住基カードの使用が可能になり、ICチップに性別情報も書き込まれる。
 米沢さんは「住基カードの取得は任意だが、クレジットカード作成や、銀行口座開設で身分証明書代わりに提示を求められるようになると、カード所持が実質上強制される。外見は女性、カード情報は男性というときに、当事者が感じる精神的な負担は大きい」と指摘。性別をめぐり多様な現実がある中、「自分の性別は自分で決められるべきで、自己決定権を侵害される住基ネットには反対する」と主張する。
 戸籍研究家の佐藤文明氏は「日本のような戸籍制度は、韓国と台湾にしかない。韓国でも戸籍の性別変更が認められた」とした上で、日本は行政の文章の中に性別欄が多すぎる。性別がデリケートな個人情報だという認識がないからだ」と行政側の認識不足を挙げる。
 そして個人情報の扱いについて「不要な個人情報の蓄積と流出は、性別に違和感を持つ人たちだけでなく、ぼくらにも不利益が生じる。あらゆる行政データの見直しが必要だ」と話している。

今後の課題 −新潟市など

 印鑑登録証明書の性別表記について、県地方課は「国の事務処理要綱に従って、県内の多くの自治体が性別表記をしているはず」と話す。新潟市など主な市は性別表記をしており、小金井市の動きについて「今後の検討課題」と口をそろえる。
 新潟市の山際誠一市民課長は「要望がない現時点では何とも言いようがないが、必要があれば小金井市の事例なども調べ、新潟市の実情に合ったものかどうか、検討していきたい」と話す。
 長岡市も「これまでのところ性別記載についての苦情などはないが、今後出てくれば検討したい」。上越市も「(小金井市などの)事例は調べてみたい」としている。


 地方紙からのまじめなインタビューでした。というか、いずみちゃんナイト11の写真が思いっきり出てるやん(笑)。
 文章は、短い字数の中でうまくまとまっていると思いますが、佐藤文明さんはこんなこと言ってたかな、というのはちょっとギモンです。
 なお、若竹りょう子については、私は否定的見解を持っています。こちらをご覧ください


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